住宅特集 2021年7月号発売となりました !

新建築ライブラリー 第14回:『建築昭和史』その14

当社の96年におよぶアーカイブから、絶版本を中心に紹介する「新建築ライブラリー」。前回に続き、『建築昭和史』(1977年、著:佐々木宏)の第3章「昭和13年から昭和19年までの状況」をご紹介します。

以下、本文より抜粋
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〈モニュマン〉は当時忠霊塔のコンペが行なわれたためであり、〈都市計画〉や〈新しき都市〉は戦時下の防空問題を含んだもので、ミリタリーの要素を加えた都市計画の考え方の本格的考察であって、今日の日本の都市論でそれが欠如していることを考えると興味深い。さらに〈新しき都市〉では短文ではあるが内田祥三の寄稿が注目される。工場特集はほとんど外国の事例ばかりであって、日本の工場は機密上から発表不可能であったという事情の反映がうかがわれる。他のテーマは、当時の建築がどのような意図と目的で建てられたかという政治的社会的背景を伝えてくれる。住宅関係の特集がいくつかあり、さらに住宅営団の住宅も報告され、西山夘三の論文なども載せられるようになって、「新建築」と住宅との関係は、戦時下でも別な形であるにせよ、深いものがあるのがうかがわれるのは興味深い。

異例なのは新形式木構造特集である。これは新興木構造ともよばれていたもので、主として工場や格納庫などの大スパン架構を木造で建てるために研究されたものでこの新しい技法を習得することは設計者や施工者にとって急務のテーマだったわけである。こうした技術的面についての特集は一度だけであったが、しかし、この戦争中の時期に技術的な記事が次第に増加して行くのである。防空壕、代用セメント、ヂベル、防火その他,当時の技術的新知識の伝達も行なわれた。これは作品が減少した穴埋めの役割を果たしたばかりでなく、専門誌として検閲にパスするにも都合がよかったようである。

内容はともあれ、誌面構成から見ると,創刊号の意図した啓蒙的な雑誌へと逆行しているのではないかとさえ思われるほど多彩な記事が載るようになった。また大判ではあるが、ページ数は次第に減少し、紙質も悪くなり、図版や写真も粗悪になって、ついに休刊せざるを得なくなってしまうのである。

その多彩な記事の中で、技術的なものとともに数が増して行くのは戦時体制下における建築家の使命を追求する文章である。 しかし、先にも触れたように「新建築」は他の雑誌ほど積極的ではなく、重要な論文は見当たらない。前川國男の〈建築の前夜〉という苦渋に満ちた文章が目立つ程度である。勇しい声は、編集に協力していた若い世代から出ているが、実務を経験してきた世代は、仕事が激減して行くという身近な現象から、むしろ悲観的であって、心底から戦争を讃美でぎなかったようである。年輩の世代でははむしろ大学教授たちがナチスの建築を積極的に紹介したりして、学生たちに国家主義を吹き込んだのではないかと推測される。「新建築」は幸か不幸かそういった暴風圏から少しはずれていたようである。

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著者略歴(*本データは書籍の刊行当時に掲載された情報です)
佐々木宏
昭和6年北海道に生まれる。昭和30年北海道大学工学部建築学科卒業。昭和32年東大大学院修士、昭和37年同博士課程終了。現在、佐々木宏建築研究室主宰、および法政大学工学部講師。