住宅特集 2021年7月号発売となりました !

海外の都市 第6回:カナダ・トロント ---Ravine, Bluffs and Islands

河野明日香/ランドスケープアーキテクト(PUBLIC WORK)

トロントの中心部は峡谷・断崖・島の自然地形によって囲われており、歴史的な遺産や緑のコリドー、大規模な公園はこの周辺に位置している。自転車道や遊歩道が整備されており、トロントのグリーンインフラストラクチャーの要となっている。

トロントの緑のネットワークマップ(設計/PUBLIC WORK, TO Core プロジェクト)

東側の境界であるドン川。これは一万二千年前のウィスコンシン氷河によってつくられたトロントのラビーン(峡谷)で、トロントの都市の骨格となる自然地形の一つだ。そこには「The Don River Valley Park」という200haの公園が河川沿いにあり、都心に住む人びとのオアシスとなっている。見て回るには、自転車を借りてドン川沿いを走り抜けるのがよいだろう。このルートは浅くなった川を渡れるようになっていたり、さまざまなアートや歴史的な遺産を巡ることができる。特にレンガをつくるための粘土の採掘場後をコミュニティセンターとして再生した「Evergreen Brick Works」はぜひ見てほしい。エコロジカルランドスケープの作品としても素晴らしく、ファーマーズマーケットやワークショップがよく開かれている。

「Don River Park」とダウンタウン

南側の境界であるオンタリオ湖に浮かぶトロントアイランド。ウォーターフロントからフェリーで15分ほどで到着する。カヌーを使って行くのもよいだろう。15個の島が橋で繋がってできており、ウォーキングやサイクリング、ビーチに行く人でにぎわう。その一つの「Leslie Street Spit」は全長5kmの埋め立てによってできた島で、元は防波堤のためのものであったが、後に意図せず野生生物の生息地となった場所である。渡り鳥の貴重な生息地となっており、Nature CanadaやBird Studies Canadaによって自然保護地に指定されている。

ダウンタウンからトロントアイランドへのコネクション

西の境界であるギャリソン・クリークは都市開発によって埋め立てられた小川だ。その地形を使ってできた公園が南北上につながり、緑のネットワークを形成している。

トロントは洪水対策にとても力を入れており、公園をスポンジの役割をするように配置することで、洪水被害をやわらげつつも景観を失わない取り組みが都市のスケールで行われている。また、北の境界ダベンポート崖は氷河前縁湖の崖の一部で先住民が使っていた道の一つ。現在は「Davenport Rail Trail」として整備されており、昔の地形を体験できる貴重な場所となっている。

河野明日香/ランドスケープアーキテクト
PUBLIC WORK(トロント)勤務。1990年横浜生まれ。慶應義塾大学卒業。奈良女子大学大学院修了。トロント大学大学院ランドスケープアーキテクチャ専攻終了後、2017年より現職。