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海外の都市 第8回:カナダ・トロント ---Local Places

河野明日香/ランドスケープアーキテクト(PUBLIC WORK)

最終回となる今回は、前回までに挙げきれなかった素敵な公共空間や隠れた名所、そしてトロントを代表するいくつかの建築物を紹介する。

「Yorkville Park」

(設計/Oleson Worland Architects + Schwartz Smith Meyer Landscape Architects + PWP Landscape Architecture)

この公園はヨークビルという高級商業地に位置しており、地下鉄建設によって生まれた空き地にできた全長150m幅30mの小さな公園だ。この公園は “カナダのランドスケープ”をテーマにつくられており、西洋アカマツの森、湿地帯、滝、カナディアンシールドなどを表した空間が広がり、人びとの憩いの場となっている。

「Yorkville Park」 写真提供:PUBLIC WORK

「The Pasture」

トロントにはPOPS(Privately Owned Publicly- Accessible Spaces)といわれる公園と私有地の間に位置するパブリックスペースが多くある。これらは歩行者中心のまちづくりに大きく貢献している。カナダ人のアーティストJoe Fafardによる等身大の牛の彫刻「The pasture」はビジネス街の真ん中にゆったりとした牧草地を思わせる空間をつくっている。

「The Pasture」 写真提供:PUBLIC WORK

「Underpass Skatepark」

高架下というと暗く、安全ではないイメージがあるが、この公園はそんなイメージを払拭し、都市の忘れられた空き地をうまく利用した例だ。高速道を屋根にして1年中使え、アーチ構造をアートのキャンパスとして使い、照明を効果的に取り入れることで明るく開かれた公園をつくっている。

「Underpass Skatepark」 写真提供:PUBLIC WORK

また、トロントには古い建築物も数多く残る。ミース・ファン・デル・ローエによる「トロント・ドミニオン・センター(Toronto-Dominion Centre)」は1960年代、トロントの経済急成長期に金融街の象徴として建てられた。建物は青銅色のガラスと黒色塗装のスチールで覆われた鉄骨造で、外側に鉄製のI字形鉄鋼マリオンが取り付けられている。このような古い建築物を、残しつつ増築・改造した例は多くみられる。NADAAAとPUBLIC WORKの設計による「トロント大学建築・ランドスケープアーキテクチュア・都市デザイン学科棟(The Daniels Building in University of Toronto)」は、スパダイナストリートの環状交差点の中央に位置し、1875年に建てられたゴシック様式の歴史的な建物を2017年に改装したものだ。

「Virtual Tour of the Daniels Building」:UofTDanielsより転載

本コラムではトロントの都市の魅力について、人・地形・道・場の4つの視点から紹介した。コロナ禍が明けた後、現地に訪れた際は有名な建築物を見て回るだけではなく、その土地に住む人の生活や文化がどのように都市に反映されいったのかにも目を向けてみると、さらに多くの発見があるだろう。

河野明日香/ランドスケープアーキテクト
PUBLIC WORK(トロント)勤務。1990年横浜生まれ。慶應義塾大学卒業。奈良女子大学大学院修了。トロント大学大学院ランドスケープアーキテクチャ専攻終了後、2017年より現職。