新建築 2021年3月号発売となりました !

京都大学 平田研究室 × 小椋・伊庭研究室 × 新建築社 北大路ハウス 共同企画

ぬくもりデバイス実験日誌

─北大路ハウスの温熱環境をクラフトする─

イントロダクション:北大路ハウスとは?

撮影/新建築社写真部

本連載の舞台は、京都大学平田晃久研究室+平田晃久建築設計事務所が設計した「新建築社 北大路ハウス」である。「冬の寒さが厳しい北大路ハウスの温熱環境を、4つの小さな実験によって改善する」。この企画は、京都大学生活空間環境制御学の小椋大輔教授、伊庭千恵美准教授、髙取伸光助教による監修、建築設計学の平田晃久教授、岩瀬諒子助教による設計指導の下、両研究室のコラボレーションによって実現した。本論に先立つイントロダクションとして、今回は「北大路ハウス」について紹介する。

北大路ハウスは京都市の木造住宅を改修し、多目的な公共スペースと一体化した、6人の学生が住むシェアハウスの計画である。新建築社の依頼から始まった本プロジェクトは、京都の建築学生の結び目を目指して、平田研究室が中心となって進めてきた。

北大路ハウスの共有空間は、既存建築の床や壁の一部を除いてできた大きな吹き抜けに、“ふろしき”をかけるように木の造作を挿入することでつくられている。この段状に広がる“ふろしき”が既存部分との間に大小のスペースを生み出し、時にレクチャーや展覧会のできるリビングとして、時に本棚と一体化した壁として、多様な活動のきっかけを生み出している。

講演会の様子。立体的な空間を活かし、2階からも質問が飛び交う。撮影/京都大学平田晃久研究室

設計は、使い手となる京都の建築学生を巻き込みながら進められた。案のコンセプトや減築箇所の検討といった設計上の重要な決定は、学生のワークショップの場で行われてきた。学生は設計主体の中に入り込み、同時にこの場所の運営主体であり、住まい手でもある。このようにさまざまな立場の学生が動的に交わり、入れ替わりながら「ここがどんな場所になるべきか」を議論する中で、建築学生の結び目としての「北大路ハウス」が立ち現れ始めたのだった。

ワークショップの様子。それぞれの居場所を見つけ、作業にいそしむ。撮影/京都大学平田晃久研究室

この改修はプロジェクトの始まりにすぎない。つくり手として、住み手として、使い手として、関わる学生が実践を続け、新しいイベントや地域交流、次なる改修に向けて今も議論を交わしている。

次回以降紹介する4つの小さな実験もまた、まさに北大路ハウスを住みこなし、アップデートする試みの一つである。「寒さに対する対策」という日常的な問題を取り上げながら、新しい住みこなしの可能性を探っていきたい。

京都大学 平田研究室 × 小椋・伊庭研究室 × 新建築社 北大路ハウス


装置設計監修/平田晃久教授、岩瀬諒子助教(京都大学)
温熱環境設計監修/小椋大輔教授、伊庭千恵美准教授、高取伸光助教(京都大学)
装置設計担当・記事執筆/多田翔哉、山口航平、齊藤風結(京都大学大学院平田研究室)
温熱環境設計担当/桑原摩周、大塚悠生、中川正貴、倉橋哲、瀧井彩加、米田昌弘、酒井紘太郎、難波良樹、小久保舞香、竹内光 、 Liu Pei(京都大学大学院小椋・伊庭研究室)
実験計測担当/大須賀嵩幸、城戸愛莉、河野泰、西村裕貴、米田慈音、渡瀬遣太(北大路ハウス住人)
イラスト協力/中島安奈(京都大学大学院平田研究室)

小椋大輔(京都大学教授)
1969年兵庫県生まれ。神戸大学大学院工学研究科修了/2004年から京都大学大学院工学研究科助手、同助教、同准教授を経て、2017年から現職 博士(工学)
平田晃久(京都大学教授)
1971年大阪府生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了/1997~2005年伊東豊雄建築設計事務所/2005年平田晃久建築設計事務所設立/2018年~現職
伊庭千恵美(京都大学准教授)
1977年北海道生まれ。京都大学大学院工学研究科修了/2002〜2012年 北方建築総合研究所/2012年〜京都大学大学院工学研究科助教/2019年〜現職 博士(工学)
岩瀬諒子(京都大学助教)
1984年新潟県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了/EM2N Architects (スイス) 、隈研吾建築都市設計事務所を経て、2013年岩瀬諒子設計事務所設立/2020年~現職
髙取伸光(京都大学助教)
1992年愛知県生まれ。京都大学大学院工学研究科修了/2020年~現職 博士(工学)
文責/齊藤風結(京都大学大学院平田研究室)
1996年大阪府生まれ。2020年京都大学大学院工学研究科建築学専攻入学