主催:長谷工コーポレーション  後援:株式会社 新建築社

最新情報

2019年4月10日
審査講評・作品展示会のお知らせページをアップしました。
2019年1月30日
結果発表ページをアップしました。
2018年11月14日
応募登録受け付けを終了しました。
2018年6月29日
応募登録受け付けを開始しました。
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審査委員長 隈研吾

kuma

今年のテーマは「働き方を変える集合住宅」ということでした.現代の日本社会では働き方改革が謳われていますが,果たしてそれが何であるのか,どのような意味合いを持つことなのか,社会の中でまだはっきりと答えが出ていません.しかし,建築に携わる人たちが,どのような建築・空間をつくるかで,働き方をどのように変えることができるのかを提案していくことが大事ではないでしょうか.私は,そのように建築のデザインが社会を牽引することがあり得ると思います.今回の応募案を見ていると,このような場所に住みたいとか,このような場所で働きたいという応募者自身の強い願望を感じられる案が多く,楽しく審査することができました.これから社会で働くことになる若い学生たちにとって,どういう空間で働きたいかと考えることはとても重要なことです.入賞した作品を見ると,どれもそのような強い想いが表現されていると思います.

 

審査委員 乾久美子

inui

昨今働き方改革の議論が盛んですが,そうした議論は一過性のものではなく,働き方が変わり続ける時代に突入したのではないかと思います.応募案を見ると,働き方の仕組みを提案しているけど建築空間の提案には結びついていないもの,建築空間を提案しつつも働き方の仕組みが分かりにくいもの,そのふたつに分けることができました.優秀賞の「集築倉庫~公私混同していく環境~」は,働き方の仕組みの提案を重視したものでしたが,とてもリアリティのあるものでした.反対に「P+xx論-微所有する暮らし-」は,働き方の仕組みとは無関係に空間の可能性に執着し続けており,時代を超えていくという意味ではリアリティがあるのかもしれません.「散歩者たち」は,働き方の仕組みと建築空間が織り混ざって変わっていくということが詩的に表現され,他の提案とは違う視点を持っており面白かったです.最優秀賞「家に帰る家」は,面白い形状のスラブと移動するモバイルカーで生まれる仕組みを結びつけた興味深い提案だと思いました.働き方の仕組みという点でも,空間という点でも若干弱いところが気になったのですが,そのふたつをバランスよく上手く結びつけていることが評価できました.

 

審査委員 藤本壮介

fujimoto

現代において働き方は多様になっています.どんな働き方でも可能ではないかと思っていたので,全くの新しいアイデアを期待していたのですが,シェアやフリーアドレスのようなある型に倣った応募案も多く,審査を終えて今回のテーマは難しかったと思いました.最優秀賞「家に帰る家」は,動く部屋とそれを受け止めるプラットフォームが多様な関係を構築する案ですが,自動運転技術の利用などを含め,さまざまな利用形態を想像することができ,未来の働き方に可能性を感じることができました.優秀賞の「P+xx論-微所有する暮らし-」は,微所有という言葉に可能性を感じました.ドローイングも綺麗でしたが,どのような働き方なのかあまりイメージできなかったのが残念です.「散歩者たち」は,提案としてはよい意味で極端で魅了的でしたが,少し単調なイメージを持ちました.佳作の「Japanese Show Rooms」は,仕事をするということをみんなで共有する喜びみたいなものが建築に変換されており,そこで働くことで他の人とコミュニケーションが生まれるというシンプルさ,あっけらかんとした建築の魅力がとてもよいと思いました.

 

審査委員 池上一夫

ikegami

今回で長谷工住まいのデザインコンペティションも12回目を迎えました.今回のテーマは,学生のみなさんには少々難しいところもあったかもしれませんが,審査を通してさまざまなアイデアに触れたことで,当社でも働き方を変える集合住宅をこれから考えていく必要があると思いました.最優秀賞の「家に帰る家」は,住まいが積極的に動くことにより職住が自由な時間と場所を選びながら,新しい関係性を構築する素晴らしい案でした.佳作の「界隈流通経済」は,昨今問題視されている物流に関する提案で,このような集合住宅によって物流の世界も変わっていくのではないかと想像させるアイデアでした.「谷間に棲まう」は,ゆったりとした休息の空間が住まいと職場の両方を活性化させていくだろうと思いました.「団地の編集 -部屋に住んで,部屋を移る」は,古い団地の回りにぐるっとデッキを回すことで従来の住空間に働くための空間を取り込むという具体的な提案に共感しました.その他の受賞作品も,どの案もよく考えられており,感心させられるものが多くありました.受賞されたみなさん,おめでとうございます.

 

ゲスト審査委員 門脇耕三

ikegami

建築が働き方を能動的に変えていくという今回のテーマは学生には少々難しいように思いましたが,応募者のみなさんが近い将来,働き方が変わることを感じているということが審査を通じて分かりました.優秀賞の「散歩者たち」は,働くことと生活することの区別がなくなっていくワーカーズライフを提案しています.その変化によって集合住宅が街に不思議な現れ方をするのが面白く,働き方の変化を敏感に感じ取っている提案だと思いました.「集築倉庫〜公私混同していく環境〜」は,集合住宅をサブスクリプション方式(モノの利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う)のように所有し,働き方を自分でつくっていく興味深い仕組みを提案していたのですが,その仕組みが空間にまで結び付いていないところが残念でした.佳作の「むだが彩る協働の暮らし」は,無駄な空間の豊かさによって働き方が変わるように建築空間を積極的に提案したことが面白かったのですが,どこか既視感を感じてしまいました.応募案を見ると,刺激溢れる案が多かったのですが,このテーマについてはまだまだ考えるべき余地があると思います.