公開2次審査観覧希望者募集
(募集は5/16に締め切りました)

お知らせ

2009年9月1日
第5回三井住空間デザイン賞実施住戸をアップしました。
2008年7月1日
2次審査結果発表審査講評をアップしました。
2008年6月16日
第4回 三井住空間デザイン賞 実施住戸発表をアップしました。
2008年4月21日
1次審査通過8組が決定! 1次審査結果発表をアップしました。
公開2次審査観覧希望者募集中
2008年3月31日
応募登録の受付を終了しました。
2008年3月19日
「過去の最優秀案実施住戸」を追加しました。
2008年3月6日
「コンペ対象住戸平面図 縮尺1/50」の図面を一部訂正します。
2008年3月4日
FAQをアップしました。
2008年2月7日
図面データを追加致しました。
2008年2月1日
ホームページをOPENしました。
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第5回三井住空間デザイン賞
実施住戸発表

パークホームズ成増マークレジデンス
設計:倉本剛( 倉本剛建築設計事務所)

倉本剛(くらもと・ごう)

1972年東京都生まれ/ 1997年日本大学大
学院理工学研究科建築学専攻修了/ 1998〜
2005年早川邦彦建築研究室/ 2006年倉本
剛建築設計事務所設立
LDK,北東側を見る 戸北側の「机ギャラリー」を見通す
LDK,北東側を見る.
左手(北側)に個室が並び,その奧に「机ギャラリー」が見える.右手(東側)は外部空間のテラスへと連続する.
撮影:新建築 写真部
住戸北側の「机ギャラリー」を見通す.
それぞれの個室との新しい関係が生み出されるように意図されている.

コンペユニット(130号室)平面/断面詳細


第5回 三井住空間デザインコンペ概要


「住空間デザインコンペ」は,時代のニーズにあった「デベロッパーと建築家・デザイナーとの新しい関係」を探るひとつの機会として2002年から実施されている.2006年に開催された第4回は,装いも新たに,名称を「三井住空間デザインコンペ」とし,若手建築家の登竜門として位置付け,最優秀賞を「三井住空間デザイン賞」として表彰した.第5回の課題建物は,東京のベッドタウンにあるファミリーマンション.対象住戸は,公園緑地に面し専用庭のある1階住戸(専有面積79.13m2)だった.提案にあたっては,「親と子の新しい住まい」が求められた.
応募登録1,649件,応募作品788点の中から,内藤廣,光井純,渡辺真理,鈴木健の4氏による1次審査で8組を選出.2008年5月24日のプレゼンテーション,質疑応答を含む公開2次審査の結果,倉本剛氏が三井住空間デザイン賞を受賞した.そして,その提案は実際にこの7月に完成した.

机ギャラリーのある住まい


ひとつの住戸プランと社会のあり方は決して無関係ではない.近年の分譲マンションは,プライバシーやセキュリティという名目によって,個室や住戸の閉鎖化,密室化を強化しすぎているように感じている.プライバシーは確かに必要だが,それは私たちの生活の一部でのことであり,それ以外は好むと好まざるにかかわらず,他者とのコミュニケーションを行うのが健全な住環境であり社会なのだと思う.ところが,プライバシー重視の考え方は徐々に私たちの日常生活に浸透し,ついには都市にもプライベートな空間が蔓延する状況を生み出している.このような総プライベート化へと向かう現代において,住まいに求められているのは,個室のプライバシーよりはむしろ,家族の関わりなのではないだろうか.LDKだけで家族が関わり,個室が密室化されるというLDK偏重型ではなく,家全体で家族が関わる,新しい3LDKのあり方を提案したつもりである.
この住戸で特徴的なのは,長さ11mの机のある空間(机ギャラリー)である.「机ギャラリー」は3つの個室とユーティリティを横断し,勉強や絵画,読書,インターネット,仕事,歯磨きや化粧など,今までは個室に閉じ込められがちだった家族の生き生きとした活動を繋ぐ.そして,まるで図書館やカフェのように,ひとりであると同時に他の人の気配を感じるという,心地よい距離感を持ったコミュニケーションを生み出す.「机ギャラリー」によって,個室を含めた室内にデッドエンドがなくなり,住戸全体に流動的な関係が生まれる.LDKだけではなく,個室同士や,LDKと個室でも家族が関わり合うことで,より自由で開放的な家族関係を築くことができるようになると考えたのである.今後,ここで示された住空間が開放的なライフスタイルのプロトタイプとして,閉鎖化,密室化を引き継ぐ分譲マンションの流れを少しでも変える,あるいは新たな流れをつくり出すことに貢献できれば嬉しい.
なお,この住戸は棟内モデルルームとして一般公開されるが,モデルルームのための家具や小物の選定も手掛けることができた.選定の際に気をつけたのは,イメージを限定するような過度な演出をせずに,空間の使い方やその自由度,開放感,周囲の豊かな緑や風を感じてもらうことであった.それらについていろいろと考えた結果,置かれるモノはすべて白色で統一することにした.日常的な風景を少しだけ抽象化することによって,体験する人のイメージを広げられるのではないかと考えたのだ.(倉本剛)
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LDKから玄関方向を見返す.キッチン の床を下げることでシンクをダイニング テーブルと同一の高さで納めている.
07
個室2からLDKを見る.

実施住戸を訪問して

内藤廣
(建築家/東京大学教授)
首都圏で無数に建てられている集合住宅は,成熟期をとうの昔に通り過ぎている.商品としてあらゆる可能性が模索され,導き出された最適解は揺るぎないように見える.しかし,一抹の不安がないわけではない.それはマーケットとの合意,つまり,立地,間取り,価格,そして転売可能性,といった単純きわまりない資産ゲームが成立しているだけなのではないか,という不安だ.ゲームのルールが変われば,とたんに瓦解する.アメリカの例を挙げるまでもない.このコンペは,このゲームの枠組みを広げることを目的としているはずだ.そのためには,既成概念に捕らわれない想像力が必要だ.それが建築家には求められている.実現した当選案は,この期待に十分に応えるものだった.住戸に足を踏み入れた瞬間,設計者のアイデアの新鮮さとセンスのよさ,そしてそれを実現化する実務能力の高さに感心した.よくできている.特に個室の扱いが優れている.いろいろな使い方が思い浮かんだ.「親と子の住まい」がテーマだが,このプランなら高齢者を抱える要介護向け住宅としても十分に使えるだろう.コンペの時にある程度の予想はついたが,実現したものは当初のアイデアを現実の生活に向けて完成度をさらに高めている.よい案と設計者を選定できたことに安堵している.

光井純
(建築家/ペリ クラーク ペリ アーキテクツ ジャパン, 光井純&アソシエーツ建築設計事務所代表)
実際にでき上がった空間は,コンペ選考時に感じていた空間の開放性と連続性を見事に実現した秀作となっていた.現実の暮らしが要求するさまざまの条件を,壁いっぱいの収納スペースと窓一面に沿って配置された「机ギャラリー」という骨太のコンセプトによって巧みに解きながらも,それらと直交する空間の連続性によって,空間に動的な側面を与えている.歩くたびに変化する空間の重なり,視線の変化,内部と外部の?がりは変化を楽しむ豊かな暮らしを約束しているようでもある.三方を外部に面した住戸の特性を巧みに生かしている今回のデザインは,風景と視線の軸を重ね合わせながら外部空間と内部空間をしっかりと結び付けている.連続する「机ギャラリー」の前に広がる植え込みの風景は,ダイニングスペース目前の風景としても展開している.キッチン,床,天井は白の色彩によって統一されているが,同色ながらさまざまの素材感を共存させることによって豊かな表情を生み出している.また,白と対比するかたちでウレタン塗装のシナベニヤ(ベージュの木)が間仕切りに使われ,住宅デザインにふさわしい柔らかな表情と機能性も表現されている.キッチンでの床の段差や鍋釜の収納場所などのディテールが気にはなったが,当初のコンセプトの強さと豊かさを見事に実現すると同時に,家族の関係の新しいあり方を暗示するような示唆に満ちたデザインが実現できたと思う.

渡辺真理
(建築家/法政大学教授)
このところ建築家が行ってきたのは〈80m2,3LDK〉という分譲マンションの「王道」を編集する作業だった.nLDK批判という最も根源的な姿勢があり,次に80m2に対して3寝室でなく,ゆとりのある2寝室,2寝室+予備室,2寝室+広い収納など「2LDK+α」化を図るという提案がさまざまに行われてきた.ユニットあたりの家族人員が縮小化しているという現実もこういった提案の背景にある.それに対して,倉本氏の設計したユニットは「家族」が与件として与えられたので,〈80m2,3LDK〉という王道を踏襲しているのだが,引き戸,窓際に連続するカウンター,オープンキッチンなどの空間要素を高いデザイン性で実現したことにより,従来型とはまったく異なった印象の住戸ユニットをもたらした.従来型も倉本ユニットもユニットバスの規格,約10%の収納率など共通点はあるが,空間の開放感とフレキシビリティの差は明らかである.

鈴木健
(三井不動産レジデンシャル専務執行役員開発事業本部長)
都心立地物件をテーマとしていた従来までと異なり,今回は板橋区成増に立地するファミリー向けマンション「パークホームズ」をテーマとしました.従来の「3LDK」という概念に捕らわれない,新しい親子関係を育む住空間が実現されることを期待しておりました.完成した住まいは引き戸の活用と梁形・柱形のないすっきりとした空間構成により,約80m2の空間の大きさを最大限引き出すことに成功すると共に,多様な家族同士のコミュニケーションの場を提供する魅力ある空間となっていると感じました.緑地を望む広い窓に面した長さ11mの家族全員が座れる机が特に印象的で,この住まいでの家族間の豊かで楽しいコミュニケーションのあり方を目に浮かべることができました.また,3面に開口を持つという妻住戸の特徴が最大限に引き出されており,住まいのどの場所にいても通り抜ける風と降り注ぐ光が感じられる気持ちよい空間となっています.今回の住まいは,ファミリー向けプランのあり方を変革させていくインパクトを持つ,新しい住まいの提案となっていると考えております.

応募図書(結果発表は『新建築』2008年7月号).

審査員が実施住戸を訪問.
右から倉本氏,内藤氏,
鈴木氏.左に渡辺氏.

水回りを見る光井氏