公開2次審査観覧希望者募集
(募集は5/16に締め切りました)

お知らせ

2009年9月1日
第5回三井住空間デザイン賞実施住戸をアップしました。
2008年7月1日
2次審査結果発表審査講評をアップしました。
2008年6月16日
第4回 三井住空間デザイン賞 実施住戸発表をアップしました。
2008年4月21日
1次審査通過8組が決定! 1次審査結果発表をアップしました。
公開2次審査観覧希望者募集中
2008年3月31日
応募登録の受付を終了しました。
2008年3月19日
「過去の最優秀案実施住戸」を追加しました。
2008年3月6日
「コンペ対象住戸平面図 縮尺1/50」の図面を一部訂正します。
2008年3月4日
FAQをアップしました。
2008年2月7日
図面データを追加致しました。
2008年2月1日
ホームページをOPENしました。
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審査講評

内藤廣(建築家/東京大学教授)

内藤廣写真

「マンション」という言葉は、英語圏では戸建ての「豪邸」を意味し、日本での意味とは違う。しかし、現在首都圏で建設されつつある集合住宅は、価格帯といい購入者といい、戸建て豪邸を購入し得るようなマーケットを相手にしている。価格だけを見れば、まさに「マンション」になったと言える。問題は、この限られた空間の中で、本来の意味でのマンションと言い得るような豊かな「暮らし」を生み出せているかどうかだ。商品としてステレオタイプ化し、マーケットは飽和しつつある。このコンペの意義も、次の時代を睨んだ新しい「暮らし」を創造できるか、マンションならではの新しい「空間の質」を提示できるかにかかっているはずだ。ここに三井不動産レジデンシャルと建築家の共有し得る目標がある。今年は微妙なテーマだった。ステレオタイプの「家族」ではない。夫婦の関係性がかつてのように強固なものではなくなりつつある。それにともなって家族のあり方も多様化し、住宅やマンションも新しい価値創造の必要に迫られている。今回のテーマ設定は、「暮らし」の重心が「男と女」というヨコの関係から、「親と子」というタテの関係に移りつつあることを表している。単なるアイデア募集ではなく実施を前提にしているにもかかわらず、このコンペに対する関心の高さにはいつもながら驚かされる。気になったのは、応募作がいくつかに類型化できることだ。数は多いが、デザインや平面構成のオリジナリティという点では「幅が狭い」と言わざるを得ない。一次審査を通過したのは、それぞれの類型の中で密度と完成度の高い案、と考えていただいてよいと思う。
最優秀の倉本案は、個室の展開がフレキシブルで、時間の推移と共に間取りの展開が如何様にもできる魅力があった。窓際に据えられた作業机のあり方も、現代の暮らしを的確に捉えた提案だ。全体として「親と子」がこの住居の中で、時間と共に変化を許容しながら「暮らしを育む」姿が想像できた。倉本さんの落ち着いたプレゼンテーションと質疑に対する答え方からは、実務を託しても高いレベルで案を実現に漕ぎ着けることがイメージできた。よい設計者を選べたと思う。

光井純(建築家/ペリ クラーク ペリ アーキテクツ ジャパン,光井純&アソシエーツ建築設計事務所代表)

光井純写真

今回は800案に迫る応募があり、主催者共々反響の大きさに驚くと共に、このコンペの社会的意義の大きさを痛感させられ、選ぶ立場として身の引き締まる思いであった。このコンペは実施コンペであり、でき上がったものを実際に購入される顧客によって評価されるという点で、社会と建築の接点を再考察する場となっている。
最優秀の倉本案は実に巧みに、そして、そつなく審査員を説得した実力あふれる案であった。空間の軸線、空間の可変性と連続性の操作を有効に使いこなしており、住んでみたいと思わせる空間を実現している。親と子のワークスペース、個室、居間・食事スペース、それぞれの流動的な関係がたいへんおもしろい。実現にあたっては、仕上げ材料、色彩、素材感などを十分に検討し、主張のある作品にしていただきたい。
優秀賞の坂本案、鈴木案も可能性あふれるすばらしい案であった。坂本案では幸福な親と子の関係を感じさせるダイナミックな空間の重なりがデザインされている。プライバシーと親密さのせめぎあいのバランスが、親と子の微妙な距離感に反映してくることを示した案である。鈴木案は廊下をなくして、空間の連結によって構成を行っている。結果的にこれまでになかった空間の可能性が随所に見えている。しかしながら隔壁家具の開口部の扱いで評価が分かれた。
佳作の中の廣岡案は荒削りながらも、楽しい家族の時間と関係を感じさせる「場」を巧みに展開している。家族の関係の中に生まれる多様な出来事をきちんと理解した案となっているが、水回りや個室の寸法などでいろいろと無理があるのではないかと議論があった。また、久野案は個性的で可能性を秘めた案として評価されたが、提案された「場」の使い方のイメージが少し不明瞭ではないかと議論がなされた。
総じて、デザイン的にも技術的にもレベルの高い作品が多く感銘を受けた。優秀なデザイナーがこのコンペから羽ばたいていかれることを願っている。

渡辺真理(建築家/法政大学教授)

渡辺真理写真

シングルやカップル対象の集合住宅ユニットが多彩な展開を見せている時代に、ファミリー型の分譲マンションだけが旧態依然な80m3、3LDKのままでよいわけではないだろう。今回の、成増という建設予定地が東京のファミリー層の拠点としてリアリティのある場所であることも「親と子の新しい住まい」というテーマを後押しした。
想定される平面計画上の課題として、まずは個室の問題がある。つまり、個室をいくつとるのか、大きくするかそれとも小さくするか、その役割は何か。また、家族室の配置、規模、個室との関係性も鍵となるだろう。課題として与えられた住戸は住棟1階の北端部に位置している。そのため住まいの東、北、西が外部に開放されているという恵まれた条件下にある。それをどのようにデザインできるかもテーマだった。
一次審査を通過した8案のうち、倉本案、坂本案、鈴木案、小野+加藤案、廣岡案にはその点で明快なアイデアがあった。廣岡案の平面形はこのごろ若い世代がよく使う「アミダ型」平面。小さな部屋の連続が不思議な魅力をかもし出す。住戸周囲に通路空間を配するという小野+加藤案は立地条件への的確な反応。通路を単なる通路にしない工夫が光った。鈴木案の家具で部屋を仕切るというアイデアは住戸を部屋の連続で解くという試みとしても評価できる。子ども室の両側にスライディング扉により窓を設けるという坂本案は家族間の自然なコミュニケーションを育むのではないかとして、倉本案の窓際に連続する机ギャラリー提案と激しく首位を争った。
倉本案の机ギャラリーの有効性を疑問視する意見もあったが、ぼくたちはかつて「NT」という住宅に「ライブラリー」というかたちで提案したことがあり、十分妥当性があると考えた。倉本案は引き戸の多用による変化のある平面のほか、住戸への入り方を変えて玄関から長いLDKに続く空間に東西から光と風を通すなど細かな配慮が際立っていた。

鈴木健(三井不動産レジデンシャル常務執行役員開発事業本部長)

鈴木健写真

幅広いデザイナーの方の優れたアイデアを実際の分譲マンションに活用させていただく場として、また、マンションを購入される方々と新進気鋭のデザイナーとの出会いの場として、私どもと新建築社では2002年より「住空間デザインコンペ」を共催してまいりました。
第5回の今年のテーマは「親と子の新しい住まい」。第4回までは都心立地物件をテーマとしてきましたが、今回は板橋区成増に立地する、私どもの基幹ブランドであるファミリー向けマンション「パークホームズ」をテーマとして、従来の「3LDK」という概念にとらわれない新しい親子関係を育む提案を求めました。今回の応募作品数は過去最高となる788点。そのどれもが熱意のこもったすばらしい提案で、住空間デザインの持つ可能性と奥深さを改めて認識させていただきました。この場を借りてご応募いただいた方々にお礼を申し上げます。
このコンペの最大の特徴は受賞作を実際の住宅として建築し、商品として販売を行うことにあります。そのために審査するにあたっては提案の斬新さという観点だけでなく、現実の建築を行うにあたっての現実性、マーケティング面から見た顧客アピール性等の観点も加味いたしました。
今回の受賞作品も実際のモデルルームとして、来年の夏、皆様にご披露させていただく予定です。今後も住空間コンペを通じて、デザイナーの方々と共に、分譲マンションの住空間に対して斬新な提案をしてまいりたいと考えております。