優秀賞


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高瀬啓文/伊藤勝之
(名古屋工業大学大学院/名古屋工業大学)

ODEN HOUSING

現代まで,コンテクストは塗り替えられ続け,都市においてしばしばその断片が見え隠れする.この計画は,ちぎれたコンテクストを集積し,都市を再構成するための21世紀住宅である.
敷地は鳥かごのように周囲を建物で囲まれている.過去のコンテクストである田園風景と高密度のコミュニティ,そして現在における敷地の閉鎖性を集約し,その最大公約数を解答とすることで地域の固有性を露わにする.
一言でいうと,まるで「おでん」のように,高床式集落がにょきにょきと林立するランドスケープと,人の活動がごったがえしになった都市の余白を計画した.地上は機能や所有が限定されない場所であり,住人も地域住民もひとつの大きな空間を共有し,生活の延長として利用できる.住人は空と森を手に入れ,隣人は新たな都市体験を得る.
この計画は,原理的に増殖性を持つ.前面道路が歩行者のための界隈となり,ミニ開発の建て替えと広がる.人が豊かに暮らしながら都市が変容し,更新していく.

審査委員コメント

ポエティックな風景をつくりたいという考えはわかる.そうしたポエジーから建築をつくることも十分ありえる.では実際にそれを実現するために必要な前提条件は何か.このポエティックな風景を残しながらそれがどうしたらリアリティを獲得できるか,ここでどのような生活が可能なのか,それを説明することだと思う.それがないから,ほとんどリアリティが感じられないのだと思う.

(山本理顕)

「藤森ねらい」という言葉が審査委員の間から出たが,私はそうは思わなかった.なぜなら,ツリーハウスのつくり方の微妙な細部が私の好みではなかったからだ.この手の建築も,それはそれであれこれ方向は違い,奥は深いのである.

(藤森照信)

まるでおでんが集団で歩いているかのような,ユーモラスな提案である.スケールは非現実的であるし,構造的にも成り立ちそうにないが,何故かこの風景は魅力的である.それは,森の中の集落のようであったり,不法占拠の街のようであったり,あるいは風が吹けば何かガサガサと音をたてそうであったり,ピロティのようで,草がぼうぼうと生えてきそうだったりとか,何かこれからの住宅が目指すべきイメージをたくさん喚起させてくれるところに惹かれる提案であった.

(千葉学)