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作品例部門審査経過
ー作品例部門では19作品の応募がありました.まず,審査員のみなさんに秀逸と思う作品に投票していただきました.その票数を基に審査を展開していきました.
- 古谷
- 投票の結果は,博多三井ビルリフレッシュルームがいちばん,次が大日本印刷 DNP 五反田ビルです.これらの作品を最優秀・優秀賞候補の軸と考えて,その他の作品を含めて検討していきましょう.natsumeは佐藤さんが推していますが,いかがでしょうか?
- 佐藤
- この作品は美容室の中の喫煙室です.人と機能が詰まった濃密な空間の中に喫煙室をつくるのは面白いテーマだと思います.喫煙室の中にいる人と外にいる人の関係が個性的だと思います.スタッフは美容室の中を動きまわっていて,お客さんは鏡のほうをずっと向いている.そして喫煙室の中の人はたばこを吸っている.
- 古谷
- なるほど.トヨタ自動車事務本館は西沢さんが推されていますね.
- 西沢
- ドアがないだけですが,それを今までに他の建物でも何度か試みてきたと書かれています.ここまでドアをなくすことにチャレンジしていることがすごいと思いました.特に喫煙室の面積を大きくできない場合に,ドアをなくす効果があると思います.最近では喫煙室が小さくて,人が溢れてしまい,事実上ドアがないのと同じような状態になってきているところがありますよね.そうしたケースに適応できるとよいのではないでしょうか.でも,ドアのアイデアだけだと最優秀・優秀賞には至らないかもしれないですね.
- 古谷
- 喫煙室の空間自体がちょっと寂しい印象があります.でも,ずっと試みてきていることは評価できますね.
- 六鹿
- そうですね.かつて2回のコンペの影響からか,分煙空間が以前より浸透している印象です.メーカーの製品を置いただけの喫煙室でよいという発想はなくなってきていて、コミュニケーションを活性化させたり息抜きをしたりすることと関連づけて,空間の問題として捉えるようになってきています.
- 妹島
- そうですね.過去2回の蓄積が着実に出てきているように思います.ドアをなくすアイデアもよいと思いますよ.
- 西沢
- そうすると,今後はドアのないものが増えてくるかもしれない(笑).
- 小泉
- 過去の2回になかったタイプの作品として,natsumeは面白いと思います.空港や商業施設などの大型の施設の中では喫煙室は当たり前に出来てきていますが,美容室のような小さな空間に喫煙室をつくる試みは新しいと思います.
- 古谷
- なるほど.では,多数票の2作品に目を向けてみましょう.まず,博多三井ビルリフレッシュルームはどうでしょうか? L字の内側に喫煙室,外側が動線になっていて,ふたつは分けられているけど,心理的には分けられていないような空間ですね.
- 西沢
- L字に配置しただけという感じがあります.でも,それで解決したところが面白いのかな.
- 古谷
- 黄色のカラーリングやガラスに施されたグラフィックは寒々しくなりがちな喫煙室の印象をさっと吹き払っているように思います.空間づくりの問題としてきちんと応えているのではないでしょうか.それでは,大日本印刷 DNP 五反田ビルについてはいかがでしょうか?
- 佐藤
- 技術的には高層ビルの中でつくる提案としてはギリギリのラインまで攻めていると思います.一方で,博多三井ビルリフレッシュルームは楽しそうな印象があります.どちらもよい作品だと思います.
- 妹島
- そうですね.博多三井ビルリフレッシュルームは実際に使ってみても楽しいと思います.
- 古谷
- このふたつを上回る作品はなかなかなさそうですね.それでは,投票数を反映して,最優秀賞を博多三井ビルリフレッシュルーム,優秀賞を大日本印刷 DNP 五反田 ビルでいかがでしょうか?
- 審査員一同
- 賛成です.
(2009年7月23日,JTビルにて 文責:本誌編集部)