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新しい建築のデータベース構築について 『新建築』創刊95周年に寄せて

新建築社代表取締役社長 吉田信之
 
 
『新建築』は,大正14(1925)年7月,京都帝国大学武田五一博士のご指導のもと第1巻第1号を刊行し,本年創刊95周年を迎えました.
小誌は,大正・昭和・平成を経て令和の現在に至るまで,創刊当初からの出版理念を不変の基幹として,日本建築の有り様を記録し続けてまいりました.現代日本建築の流れを誌面に映し続けた95年です.

この誌歴を重ねることができましたのも,創刊以来変わることなく皆様より賜ったご支援ご鞭撻,また毎号与った高誼のお陰によるものと,心より感謝の意を表するものです.

21世紀に入りほぼ20年経過した今,世の中の変化はまさに我われの想像を超えるものであります.未曾有の災害に幾度も見舞われ,中でも東日本大震災では建築が自然の前ではあまりにも無力であることを痛感させられました.震災から3カ月後に出版した『今,建築について思うこと』では建築に携わる174人の言葉が綴られています.改めて読み返してみて記録するということの重要性を痛切に感じる次第です.

先端技術やデジタル技術が我われの生活を大きく変えていき,持続可能な循環型社会の実現に向けて多くのチャレンジが始まっています.建築はこのような問題にどう向き合っていくのか,新しい提案が必要とされています.

創立95年を迎える弊社は,世界的なデジタル化の流れの中で,3年前より『新建築』のデジタル化を進めてきました.昨年には『新建築』創刊号からのすべての誌面をデジタル化すると共に,2005年以降の『新建築』につきましては掲載情報を再編集しデータベース化し,膨大なコンテンツを整理しました.人工知能や深層学習機能などの新しい技術を駆使して建築における自然言語検索にも取り組んでいます.

2020年春より雑誌誌面だけではなく,このデジタル検索サービスを本格的に稼働させる予定です.建築に携わる実務者・教育者・学生の方々により質の高い建築情報を提供できると考えています.また国内の建築情報だけでなく,弊社子会社の発行する雑誌『a+u』を通して,世界の建築と建築家のデータベース化にも取り組んでいます.

さまざまな情報がネット上に溢れていますが,弊社では専門性を深化させ,より精度の高い建築データ収集と利便性の高い検索機能を備えた建築データベースを構築し,異次元の建築プラットフォームをつくるべく取り組んでおります.

『新建築』はこれからも創業以来変わらぬ姿勢で活動を続けていくと共に,より高い専門性を追求し,皆様のお役にたてるような建築情報メディアを目指して新たなスタートを切ります.重ねて皆様の引き続きのご支援をお願い申し上げ,創刊95周年を迎える年頭のご挨拶とさせていただきます.