新建築 2005年5月臨時増刊 Sustainable Architecture 持続可能性の建築 新しいオフィスの試み竹中工務店東京本店新社屋
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サステナブル・アーキテクチャーとして新社屋に盛り込まれた特徴を,竹中工務店のコンセプトである「サステナブル・ワークス」のフレームに合わせた形で1章から6章までを構成し,「ワークプレイス」と「IT」のために7,8章を設けている.さらに9章では建築的なディテールを紹介する.
Structure of this Magazine: This magazine presents Takenaka Corporation’s New Tokyo Main Office Building from a variety of different perspectives. We have strived to provide an easy-to-understand description of the three key themes of the design of the New Tokyo Main Office Building: the creation of a highly efficient and high-quality workplace; the reduction of environmental load; and the pursuit of cost-performance. Chapters 1 to 6 present the features incorporated into the New Tokyo Main Office Building as sustainable architecture, in line with the framework of “Sustainable Works,” which is a concept of Takenaka Corporation, and Chapters 7 and 8 deal with the workplace and IT respectively. Chapter 9 presents architectural details.

2004年9月に江東区新砂に竣工した「竹中工務店東京本店新社屋」は,CASBEE(建築物総合環境性能評価システム)におけるBEE(建築物環境性能効率)において,Sランク(たいへん優れている)に格付けされたサステナブル建築です.同じ,2004年11月,ロシアが地球温暖化の防止を目指す京都議定書を批准したことにより,2005年2月16日に発効した.これにより,同議定書を批准しているわが国は,2008~2012年の温室効果ガスの削減目標の達成が不可欠となりました.建築分野は,資源・エネルギー消費をはじめとする各種の地球環境に係わる指標において占める比率は大きく,地球環境の悪化に対して重い責任を負うものであり,また今後の環境保全のために果たすべき義務も大きいものがあります.その意味で,やがては,環境性能効率の指標のある水準をクリアすることが義務化されることになるでしょう.「竹中工務店東京本店新社屋」の高い環境性能効率は,建物の環境品質,性能を高め,同時に,外部への環境負荷を少なくするための,さまざまな技術の最適な組み合わせと,建築的な解決によって成し遂げられているものです.本書は,このサステナブル建築の成り立ちを,それを構成するさまざまな素材や技術を含めて詳しく紹介するものです.
本誌の構成
本誌では「竹中工務店東京本店新社屋」をさまざまな視点から紹介している.新社屋のデザインの3つの柱である,「高効率・高品質なワークプレイスの構築」,「環境負荷の低減」,「コストパフォーマンスの追求」について分かりやすい解説を目指した.サステナブル・アーキテクチャーとして新社屋に盛り込まれた特徴を,竹中工務店のコンセプトである「サステナブル・ワークス」のフレームに合わせた形で1章から6章までを構成し,「ワークプレイス」と「IT」のために7,8章を設けている.さらに9章では建築的なディテールを紹介する.
「ファクター4」以上を目指した竹中工務店東京本店新社屋 デザインとエンジニアリングのインテグレート
ワイツゼッカー氏らによって提唱された「ファクター4」は,効率革命によって豊かさを2倍,資源消費を半分にし,資源生産性を4倍にすることを目指したものである.CASBEE(建築物総合環境性能評価システム)における環境効率もこれと同列の考え方に基づいている.「竹中工務店東京本店新社屋」は,「ファクター4」,つまり,CASBEEで言えば,環境効率: BEE=4.0以上を目指した.設計,構造,設備,施工,技術等のメンバーによる竹中工務店が伝統的に培ってきたデザインとエンジニアリングのインテグレート(統合)によって,デザインとコストを含めた設計と共に,竹中の総合環境性能評価システムを使ったフィードバックによる検討をしながら設計・施工を実施した.結果としてCASBEEのBEE=4.6と言う高い環境性能を実現できた.環境性能効率BEEが4を超え,すなわちファクター4を超える領域に位置付けられる .Contents巻頭対談: サステナブル社会における建築の可能性村上周三×服部紀和論文: 新たなオフィスタイプの発想 菅順二論文: サステナブル・アーキテクチャーに求められること 松隈章竹中工務店の環境配慮建築の系譜とサステナブル・ワークス
1. 室内環境論文: 室内環境に求められるもの 水野吉樹呼吸する外皮大きな気積,天井システムの構成光と風の道光環境空気の流れ/空気質環境温熱環境・音環境2. ライフサイクル ・サービス性能 論文: オフィスに求められるサービス・ライフサイクル性能 伊藤宏樹フレキシビリティ大きなスペースコミュニケーションの創出アダプタビリティ/設備モジュール火災時の安全性能長期安全性外殻ブレース構造基礎構造災害時の対応ライフサイクル評価と維持管理3. ランドスケープ論文: ランドスケープ/持続可能な「環境」の創造 大西美典地域環境への配慮隣接環境に配慮した配置計画隣接環境の景観内外を繋ぐディテール4. エネルギー論文: サステナブル時代のエネルギー利用 白鳥泰宏エンベロープデザイン低温・大温度差の熱源搬送システム自然エネルギー利用太陽熱集熱ダクトモビリティの計画 5. 資源・マテリアル論文: サステナブルなマテリアルと施工 柴田恭幸省資源化研ぎ出しPCa版ダンボールダクト6. エミッション・敷地外環境論文: エミッション抑制と地域環境への融合 高井啓明敷地外環境・ヒートアイランド化抑制コンカレントな設計施工体制施工時の環境負荷削減7. ワークプレイス論文: 継承と成長のためのワークプレイス 山口広嗣プログラミング・包括的アプローチゴールの設定要望整理とスタッキングプランプランニングコンセプトワークステーションコミュニケーションスペースサポートスペース事前・事後調査: POEワークプレイス・プロダクティビティ8. IT環境論文: 建築とIT 河野雅英ITプランニングプロセスワークスタイルを実現するIT9. ディテール・資料編論文: 表現とディティール 鹿島正明館銘板・門扉軒天井・風除室エンランスホール(受付けカウンター・吹き抜け手摺)光天井・光床応接室・応接廊下役員廊下セキュリティゲート喫茶カフェテリア・厨房食堂吹き抜け中央階段トップライトトイレリフレッシュコーナーABホールサイン計画照明計画アート計画ワンパッケージサービス環境評価の方法/竹中環境評価シートCASBEE-新築環境評価シート図面データシートプロフィル