最優秀賞

多鹿祐司(宇都宮大学大学院)

(※ クリックすると拡大して表示されます)
最優秀賞 :: 多鹿祐司(宇都宮大学大学院)

地上75cmのランドスケープ

部屋とテーブルが市松模様に重なった,テーブルセットのような住宅.
それぞれの部屋には機能や所有によってモノが分けられる.一方,テーブルが部屋を跨いでいることで,隣り合う部屋のモノは1枚のテーブルに無関係に集まってくる.このテーブルの上の「無関係な関係」によって,生活はリストラクチャリングされていく.
例えば,別々の部屋で別々のことをしているふたりが同じテーブルを共有したり,部屋の中で無関係なモノが少し混ざり合って,その部屋の使われ方も曖昧になっていったりする.外に張り出したテーブルはコミュニケーションのインフラとなるだろう.
関係性は数珠繋ぎに広がっていき,地上75cmには新たな風景がつくられる.

審査委員コメント

それぞれの部屋が,テーブルとそのテーブルに属した開口によってつながれている.部屋相互の関係,そしてその外側との関係が,今までの壁で仕切られた関係とはまったく違う,新しいものにつくり替えられている.テーブルという身近なものを媒介にした新しい発見だと思う.

(山本理顕)

現実的に見ると,ふたりで住むには相当広い家なので何だか変な感じだが,初めて見る案でおもしろい.床に物があると嫌だが,テーブルの上にあると許せるという感じが日本人にはある.テーブルを介し,開口から相手の顔を見るというのもおもしろい.

(藤森照信)

全体的に物の収納の仕方を提案する案が多い中で,日常的に物を使いながら,それらが置かれている状態をデザインしようとした観点はすごくおもしろかった.ただ,部屋の大きさが皆同じで,床,テーブルの高さも一定なので,あらゆる居室の印象が均質になっている.逆に,そこに置かれる物の違いを浮き立たせる効果になっていると読み取ることもできるが,場所とテーブルとの関係にもうひと工夫あればよかった.大がかりな操作ではなく,部屋と部屋をつなぐという単純な操作に徹することで,家族同士のかかわり方を,美しいイメージで見せている.

(千葉学)