優秀賞(B)

川崎啓介 石橋慶久(以上2名,立命館大学)

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優秀賞(B) :: 川崎啓介 石橋慶久 (以上2名,立命館大学)

表情のある家

社会が豊かになり,人びとの生活も趣味も多様化された結果,自己は物に集約されてきている.それらの物を収納しながら自己表現の一部として取り入れた住居を提案する.好きな物,思い出の物,生活に必要な物,それらを細分化し,幅2mの薄い住居として再構築し,前面に公園を設置する.住居を薄くすることにより住人はそれらの物により近く,好きなものに囲まれた生活の場となる.また薄い住居はそれ自身が開口部を介してスクリーンのような働きをし,公園に対して住人の個性を発信する場となる.ここでは住む人の個性が街を行き交う人びとを刺激する.やがてそれは周囲に染み出していき,画一的な街に表情を与える.

審査委員コメント

確かに窓から家の中が見えると,本やCDを飾ったり,見せるに耐える物を置くことを誘導される.外に対して見せようという意識が働く.住宅をつくるときに,何が見えて,何が見えないほうがよいのかを決めることは難しい.今は住宅の内側で全部隠してしまう.隠すことが前提で住宅はつくられている.外から見えていたほうがよい物もあると思う.私が設計した「東雲キャナルコートCODAN」で,ガラス張りのエントランスをつくったが,それによって共有廊下との関係が従来のものとはまったく違ってしまった.

(山本理顕)

本棚を見るとその持ち主のことが大体わかるように,物を見せることは,自分はこういう者です,と社会に示すときに大変有効だと思う.

(藤森照信)

窓の配置と,物の配置によって「物を見せる」ことについて正面から取り組んでいて,さらに公園とセットで提案されているのがうまい.住宅が公園のランドスケープのようになっているのがよかった.ただ,公園と薄っぺらい住宅の配置計画はよいのだが,自分のもっている物を見せて生活するという状況と,公園というパブリック性との距離感の設定は少し違和感がある.動線と物の位置が反転して,物を置くことによってプライバシーを守ることもあるのではないか.

(千葉学)