優秀賞(A)

杉浦洋平,池谷夏菜子(以上2名,横浜国立大学)

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優秀賞(A) :杉浦洋平,池谷夏菜子(以上2名,横浜国立大学)

tansu

tansuは,たんすから物を引っ張り出すように,生活そのものを引っ張り出してしまう住宅である.空間と,押したり引いたりという身体的な動作を直結させることで,物と人と空間とがここでの生活と連動していく.住宅のちょうど半分を,物を収納する16のたんすにする.物干竿たんす,キッチンたんす,草花たんすなど,たんすはそれぞれ異なる幅と特徴をもつ.tansuでの生活はこれら16のたんすを押したり引いたりすることで始まる.たんすは物を取り出すだけでなく空間そのものにも影響を与え,敷地全体に空間が展開していく.tansuでの生活は敷地の枠を超えて家の回りに溢れ出し,街を少しだけにぎやかにしていく.

審査委員コメント

引き出しを内側だけでなく,外側に引っ張り出していくことがおもしろい.外部との関係が変わってくると思う.ひとつの住宅と同時に都市インフラのことも考えて提案するのが今回の課題だった.この住宅がいくつか集まったときにどんな風景になるかということを考えていくと,屋根は家型ではなくもう少し違うデザインがありえたのではないか.リアリティを獲得するために,どのように周辺環境とかかわるか,家型を超えてほしかった.

(山本理顕)

まったく予想をしていない案だったので衝撃を受けた.特に,草花の棚を夜は中に入れておいて,日が出たら出すというのがとてもおもしろい.実際にディテールを考えると大変そうではあるが,街中にあんな住宅があったら散歩が楽しいだろうと思う.現在の日本の住宅が,実は人ではなく,半分は物が占めているという内実を表現している.

(藤森照信)

アイデア自体はそれほど目新しいものではないと思ったが,よく見ると生活のさまざまなシーンが細かなところまで考えられている.タンスを自由に引っ張り出し,内部だけでなく庭にも展開させているところは絶妙.ただ,収納という観点以外何も考えていないというのがちょっと物足りない.この引き出しを引っ張り出す動機を,収納のほかに何か見つけてほしかった.それが何か,僕にもわからないけど.

(千葉学)