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a+u 2009年12月号 ジョン・ヘイダック再考 + 感覚を刺激する空間 John Hejduk, Reprint + Perceptual Space

au-0912-00

a+u 2009年12月号

2,933 税込

在庫切れ

商品コード: 400912 カテゴリー:
特別定価

日本語 + 英語/254頁/219x292mm/A4変型/平綴じ

電子版
紙版

Content

表紙: ジョン・ヘイダック設計、オスロ 安全性。 撮影: ヘレネ・ビネット。

特集1:ジョン・ヘイダック再考 + 感覚を刺激する空間
特集2:感覚を刺激する空間

特集1: ジョン・ヘイダック再考

建築学部1年生が「ジョン・ヘイダックとはどんな人ですか」と聞いてきた。私たちは2009年度のスタジオの最中で、『Mask of Medusa: Works 1947–1983』の頁を繰りながら、そのドローイングやスケッチ、文章に感嘆していた。私たちの心をとらえたのは、線の強弱やドローイングの並べ方、そこに添えられた文章、そして建築的言語への尽きることない探求心であった。私は学生に、ヘイダックはイマジネーションの世界を開き、建築の枠組を単に建物を建てることから夢と詩と創造の世界へと拡張した人物だと答えた。ヘイダックは、建築的な言語の新たな表現方法の発見にとり組むうえでのお手本であり、1972年から2000年までクーパー・ユニオンのアーウィン・S・チャニン建築学部学部長を務め、多くの人々に影響を与えた教育者だった。彼が様々な人々、多様な専門領域との対話の道筋を開いたのは、ここクーパー・ユニオンにおいてであった。ピーター・アイゼンマンは1980年にIAUS(建築都市研究所)が刊行したカタログ『John Hejduk: 7 Houses』に次のように書いている。「……ヘイダックは、何をおいてもまず教育者であった。……時間と場所の偶然からヘイダックは教鞭を執ることになったが、彼はなお自分はビルダーであると考えていたし、今でもそう思っている」。アイゼンマンはカタログに収められた7つの住宅と、硬質な8Hや9Hの鉛筆の細い線で描かれたヘイダックならではのドローイングのテクニックについて解説している。ドローイングは「その内から建築の真の意味を静かに解き明かしはじめる……住宅をただ何となくパラディオ様式であるとかミース風であると見てしまえば、1つ1つの小さな振る舞い、建築的な真意に満ちた振る舞いがあふれんばかりに湛えるエネルギーを見落としてしまう。デリケートでほとんど感じとれないそんなエネルギーを見つけだすには、我々は注意深く対象を見つめなければならない……この手法は『建築的な言語へのとり組み』を指し示している」。1984年の『Mask of Medusa』の序文で、ダニエル・リベスキンドはこう書いている。「彼の作品がほかの建築家の作品と決定的に異なるのは、それが新たな地平への道程を切り拓いていることである。そこでは彼の作品は、異質でありながらも同時に欠くことのできない存在となっている。その場所では、通常の模倣的なコードではもはや解読できない神秘によって、建築が神聖なものとされている……。ヘイダックの作品は、都市や橋、タワー、ブランコ、刑務所、大観覧車、あるいは農地をただ漫然と眺めただけでは見えてこないものを明らかにする。彼の建築は、それらの中に不可視なものを感知している」。2年生は、鋭くも次のように受け止めていた。「ヘイダックのドローイングは、表現上の言語こそ違っていたものの、表現主義、未来派、構成主義、シュプレマティスム、ピュリスム、デ・スティル、キュビスムなどの忘れられた記憶、1920年代と1930年代の近代のプロジェクトのイメージを呼び起こす」。私は彼の見方を補足しておきたい。その時代に姿を現し、歴史の流れの中で断絶したかのように見える近代のプロジェクトの種は、1970年代、1980年代、1990年代の新たなニーズに植えつけられていると。今まさに時宜を得て、ヘイダックの作品を通して建築的な言語の可能性をめぐる対話が開かれるのである。『a+u』1991年1月号のジョン・ヘイダック特集は読者にとって決定的な邂逅となった。この号の復刻は、建築的な言語の探求を続け、忘れられた夢とプロジェクトを思い起こすことを可能にし、建築をつくり、表現していく新たな形態を創造する勇気を奮い立たせてくれるものである。この復刻は、「ジョン・ヘイダックとはどんな人なのですか」と問いかけた建築学部の1年生にとって決定的な出会いとなるのと同様に、私のような老人には忘れてはならないものを思い起こす大切なきっかけとなるものである。
エルウィン・J・S・ビライ/シンガポール国立大学准教授

NEW CONTENTS

エッセイ: 契機としての壁
マイケル・ヘイズ

インタヴュー: 坂 茂
ジョン・ヘイダックから学んだこと

ウォール・ハウス2

REPRINT

編集者序文
リヴァーデール訪問記

試論と詩
ジョン・ヘイダックの作品──外科的建築
デイヴィッド・シャピロ 高祖岩三郎訳

ジョン・ヘイダックに捧げる詩──失われた原形に倣って
デイヴィッド・シャピロ 高祖岩三郎訳
失われた原形に倣って/雪は生きている/ワルター・ベンヤミン──失われた一編/ドイツにて/アストゥリアーナに倣って/お前は背が高く瘠せている/息子のために祈る/わが息子に/秘密の宿る家/犠牲者たちのために

作品 集合住宅
ベルリン集合住宅
テーゲル集合住宅

対談
ジョン・ヘイダック デイヴィッド・シャピロ 棚町弘志訳

作品
ロンドン 時の崩壊
オスロ 安全性
リガアトランタ 自殺者の家と自殺者の母の家

論文と詩
ジョン・ヘイダック 有岡孝訳
建築と病理的なもの
ラーノの宵
アダムの眠り

特集2: 感覚を刺激する空間

人が触れることができ、内部に入れることは建築を建築たらしめている要因である。内部空間があってこそ建築だともいえ、建築あってこその内部空間ともいえる。また、内部空間は建築そのものに比べて、人間の身体感覚により近いものである。空間と人間のインタラクティヴな関係をデザインに昇華した『インテリア』が増えてきている傾向は、単なる装飾であった従来の『インテリア』の限界を示しているように思う。また建築界以外を見ても、素材、ヴィジュアル重視であった前時代的デザインから、より五感を刺激するようなものへ移行している。完成がゴールではなく、その先へ思いを巡らすことができるデザインが、サステイナブルで環境負荷が少ないことが重要視され始めている近年の動向と合致するものだろう。本特集では、内部空間デザインにおける代表作の紹介とともに、様々な視点から空間と人間の知覚について探っている。見せかけだけではなく、リアリティの時代へ、そんな風が吹いているように思う。
柴田直美

PROJECTS

OMA/AMO
プラダ2010春夏コレクションのファッション・ショー会場
デザインの背景: OMA/AMOとプラダのコラボレーション
ジャン・ヌーヴェル
ル・アーヴルの水泳複合施設『レ・バン・デ・ドック』
デザインの背景: 子ども用遊び場で使用されているフォームコーティング加工技術
カリム・ラシッド
チェルシー・ロフト
デザインの背景: カリム・ラシッドの世界
LOT-EK
プーマ・シティ
デザインの背景: 移動式建物をつくること
ジョン・ポーソン
ノヴィー・ドヴール聖マリア修道院
デザインの背景: ノヴィー・ドヴール聖マリア修道院家具詳細図
フレデリック・フラモン+ウンベルト&フェルナンド・カンパーナ
メタモルフォーゼス
デザインの背景: リサイクルすることは、変容させること
フィリップ・ラーム
屋内の暖流
デザインの背景: 空間をデザインするということは、気候をデザインするということ
ザハ・ハディッド
J.S.バッハ/ザハ・ハディッド・アーキテクツ室内楽ホール
デザインの背景: J.S.バッハ室内楽ホールを手がけた音響エンジニアによる解説
メゾン・マルタン・マルジェラ
『宴の後』
デザインの背景: メゾン マルタン マルジェラの新しい展開
Zeccアーキテクテン
生活する場としての教会
デザインの背景: 修復と新たな機能におけるZeccの視点について

FEATURES

スマート・サステイナビリティサステイナブル・ダンス・クラブ/パルプ/10ユニット・システム
モーメンタリー・スペース
ファッション・ショーのつくり方/セブン・ボーズ・オブ・トリックス /影のない女
パーセプション・オブ・アート・スペース
『私たちは空間について何も知らない』/ダイアログ・イン・ザ・ダーク/フロー5.0/デューン4.1

FILES

NEXTアーキテクツ+クラウディア・リンデルス
ハウスM&M
51N4E
WET89
アーキテクトゥールヴェルクステーデ・イ・オスロ/アスプラン・ヴィアク
WeSCコンセプト・ストア
セバスチャン・マリスカル
ピオ・ピオ・レストラン
セリー・アーキテクツ
ブルー・フロッグ・アコースティック・ラウンジとスタジオ
オフィスdA
バンク
ポイント・シュープリーム・アーキテクツ
アクティピス・フラワー・ショップ
東芝+タクラム+松井亮、Overture
リッソーニ・アッソチャーティ+ハイランド・アソシエイツ+エルウィン・ハウワー
エリー・タハリ・ファッション・スタジオ
カーメンツィント・エヴォリューション
グーグル社EMEAエンジニアリング・ハブ
J・マイヤー・H・アーキテクツ
ポジティヴ・ネガティヴ
UXUS
マックヴィレッジ
メルクス+ギロド・アーキテクツ
セレクシーズ書店聖ドミニカ教会店
ヘザーウィック・スタジオ
メゾン・ユニーク・ロンシャン
中村竜治、雪/ジンズ・グローバル・スタンダード青山店

PEOPLE

ロナン&エルワン・ブルレック

EXHIBITION REPORT

『オープニング・スーン』展 アニーナ・コイヴ

特集2編集/アート・ディレクション: 柴田直美