a+u 2011年6月号 ジェフリー・バワ──スリランカのエッセンス Geoffrey Bawa - Essence of Sri Lanka
Content
表紙: カンダラマ・ホテル。 撮影: 中山保寛/新建築社。
特集: ジェフリー・バワ──スリランカのエッセンス
カレンツ:
BIG、グロントメイおよびスペーススケープがストックホルムスポルテン・マスタープラン設計競技で優勝
ピーター・ズントーによるサーペンタイン・ギャラリー・パヴィリオン2011
ニコラス・グリムショウがブラジルの可動式アート・パヴィリオン設計競技で優勝
スリランカは数多くの古代遺跡と、壮大な自然の景観に彩られたミステリアスな国としてよく知られている。そうした魅惑的なコンテクストの中にあって、建物をつくり続けたのが建築家ジェフリー・バワ(1919〜2003年)である。現代スリランカにおける建築家の第一人者として知られる彼の作品は、数世代にわたって今もアジアの建築家、特に熱帯アジアの建築家たちに影響を与え続けている。バワはスリランカと熱帯アジアの一部をその活動の中心としつつ、サステイナビリティと気候順応性という今日脚光を浴びている概念が生まれる以前から、その土地固有の建築要素や素材、建設手法と、自身の思考とを順応させてきた。また、建物の物理的形状よりも、その中をめぐる空間的・視覚的体験を大きく重視したのも彼である。その結果生まれたのは、気候と地形とに呼応する中で、複数の空間を絶妙に配分しつつ内部と外部との境界をぼやかした、独特の建築であった。現代的な感覚によってスリランカという国の本質を純化するという彼一流の才覚こそが、作品において地域の伝統と現代性とを齟齬なく橋渡ししつつ、往時のみならず今日まで生き続けるコンテクストにたいしての美しいまでの繊細さを与えているのである。今回の特集号では、そうした彼の作品の今をとらえるべく、2011年1月に2週間にわたり掲載されているほとんどの作品の写真が撮影された。多岐にわたる作品所在地で我々が行った取材は、それぞれに深い印象をもたらすものとなり、この号にしかるべきかたちを与えている。特集はスリランカの地形の紹介に始まり、読者をジェフリー・バワによって打ち立てられた数々の伝説へと誘う。中心となるエッセイと、作品の解説では、バワのプリンシパル・アソシエイトであり、また親友でもあったチャンナ・ダスワッテ氏によって、バワの作品にたいするアプローチと背景にたいする貴重な洞察が行われている。また、特集の最後ではスリランカにおける建築教育に目を向けつつ、台頭しつつある新世代のスリランカ人建築家の作品についても紹介している。今回の出版に当たっては、ジェフリー・バワ財団のスタッフの方々の温かいご支援に加えて、現存する建物の所有者には撮影の許可を頂いた。ここに深い謝意を表明するものである。(編)
エッセイ: 受け継がれる遺産
チャンナ・ダスワッテ
オズモンドとエナ・デ・シルヴァ邸
33番レーン
ポロンタラワ・エステイト・バンガロー
アルフレッド・ハウス・ロード2
シーマ・マラカヤ寺院
スリランカ国会議事堂
デ・ソイサ邸
カンダラマ・ホテル
ライトハウス・ホテル
ブルー・ウォーター・ホテル
赤い崖の家
ルヌガンガ
エッセイ: スリランカの建築教育
ハーシャ・ムナシンゲ
スリランカの次世代を担う建築家の作品